December 03, 2006

起業から10年経つと.......

TechCrunch Japanese アーカイブ ? YahooのBrad Garlinghouse、権力闘争で一歩先んじる

われわれは焦点を絞った一貫した会社としてのビジョンを欠いている。われわれは誰も彼ものために何もかもやろうとしている。われわれがこの問題があること を何年も前から知っており、絶え間なくそれについて話をしてはきた。しかし根本的な解決策は何一つ実行されていない。われわれは取り残されることを恐れて いる。われわれは自分自身の確固たる進路を示す代わりに、ひたすら外界に反応してきた。われわれは社内にいくつものトーチカを作り、そこに立てこもって互いに話をしようとしないことが多すぎた。そして話を始めても、それははっきりと定めらた戦略目標に向かっての共同作業ではなく、縄張り争いであり、戦略を どうする、戦術をどうするかについての論争ばかりだった。

大企業病を憂うコメントですね。創業から20年も経った企業ならありえる考察ですが、これが米国Yahoo!の副社長が自社のことを言っているというのに驚き。

ヤフー!ジャパンの日本における圧倒的なポジションに比べると、米国Yahoo!は「有力ポータルの一角」という、若干弱めのポジションになるものの、でも大成功した企業であることは間違いない。それに創業からまだ10年ちょっとですわ。別にこんなところまでドッグイヤーで歳をとらなくてもいいとは思うのですが........

この手の論議の次の展開は、原文でその副社長が提言している通り、「戦略第一、ムリ・ムラ・ムダをなくして効率経営」とかに行き勝ち。でもそこには大きな落とし穴があることがあります。

90年代前半から中盤にかけてのAppleは頭のいいMBAホルダが効率経営と高収益率を売りものにしていました。でもその頃から、人を魅了するエッジの効いたものを出せなくなり、成長力・推進力を失っていくのでした。ジョブズが復帰するまでの数年間、戦略も一定しなかった。

戦略というのは「自分たちが行きたいところへいくための方向を明文化すること」と定義してくれて人がいます。つまりかっこいい戦略を立てる前に、まず自分たちが行きたいところをきちんと決める必要があるわけです。

幸い、冒頭引用したビーナッツバター宣言ではこのあとに、「まずビジョンを決める」とあるので、少しは安心なのですが、もしも引用先のサイトで指摘されているような社内の主導権争いの手段としてこの宣言があるとしたら、ビジョン策定のところをおざなりにしてさっさと戦略・戦術談義へ行ってしまうという可能性もあります。

もしそうなったらYahoo!はヤバイ。
ビジョン策定のプロセスが賛成派と反対派を見極めるだけの単なる踏み絵プロセスに化けてしまい、その後の社内は「物言えば唇寒し」「言わぬが花」という、コラボレーションを阻害する風土に転じてしまいます。

逆に、経営陣だけのミーティングをやめて、全従業員まで含めて「私たちの行きたい所はどこか」という議論ができたなら、その後のYahoo!はとてつもなく強い会社になるはずです。

実は全社論議というのは聞こえはいいのですが、やるのは本当に大変。特にこれまでオープンな議論をしてこなかった風土がある会社においては。

でもYahoo!は主張できるタレントも数多くいるだろうし、きっと建設的な議論はできると思うのです。だから、当面少しぐらい混乱しても、しっかりとビジョン策定論議の枠を拡げて、多くの従業員が納得できるビジョンを作るべきです。

残念ながらオープンな議論の結果「自分の理想と会社の理想が異なる」として去っていく社員もいるかもしれません。でも、それはプロフェッショナルとしての冷静かつ合理的な選択なのです。

一番まずいのは、行く先もはっきりしないのに船に乗せておいて、大事なタイミングで「だまされた。こんなはずじゃなかった。もう降りる」となること。力のある人にこれをやられるのが会社にとって一番大きな損失です。

出航前に冷静に船から下りることができると、感情的しこりはかなり小さいはずで、その後別のプロジェクトではプロフェッショナル同士の協力も得られるかもしれません。

いずれにしても大事なのはまずみんなが納得するビジョンをつくることであると考えます。

Posted by yutaka at 03:42 PM | Comments (0) | TrackBack (22047)